■腎炎の見方と治し方

 
学校検尿や職場健診、市民検診などで、尿蛋白陽性と言われていませんか?
尿蛋白と尿潜血が同時に陽性の場合、腎炎の確率が高くなります。ただ、例外もあり、巣状糸球体腎炎、微小変化群、膜性腎症は、尿蛋白のみ陽性です。

正確な診断(腎炎の種類やその程度により、治療が若干異なるため)には、腎生検(入院1週間)が
必要になります。背中から、超音波装置を使って、腎臓に針(直径1o程度の)を刺して、
1mmx10mm程度の組織を取ります。

組織は、ホルマリンに入れたり、凍結させて、信州大学医学部の病理学教室に送り、
色々な顕微鏡を使い、診断されます(2週間程度要します)。

病理学の先生の報告書(診断)に基づき、ステロイドホルモン(プレドニンなど)、抗血小板剤
(ペルサンチン、コメリアン、バイアスピリン、エパデールなど)を使います。
ステロイドホルモンは、副作用に、骨粗しょう症(骨折)、高血糖(糖尿病発病)、高血圧、感染症
(肺炎など)、うつ病の発症、肥満、胃潰瘍などがあり、使用に反応対して拒否反応を示す患者さんも
多いのですが、腎炎の病期によっては、必要な場合があり、使用しない場合、
腎不全に進行することも多々あります。具体的には、
糸球体という腎臓の尿をろ過する部分に、半月体などの形成や、メサンギウム細胞
などが、異常増殖している場合や、尿細管周囲(間質と言います)の炎症性細胞浸潤などの
場合です。ただ炎症の程度により、薬を減量すれば、副作用は最小限にとどまります。
使用期間は1か月から3か月くらいで、プレドニンの場合は10から20rが多いのですが、
検尿で、円柱が消失し、尿NAG(尿細管周囲炎の指標)や尿FDP(糸球体炎の指標)が
正常化しするまで、続けます。

そのほかの薬として、プログラフやブレディニンなどなどの移植や膠原病の治療に使われる
免疫抑制剤や、高血圧治療薬のアルダクトン(利尿薬)、ブロプレス(ARB)、
ロンゲス、コバシル(ACEI)などを組み合わせます。
これらの組み合わせにより、尿蛋白が消失して、1年間は我慢して使い、以後漸減しますが、
副作用として、血圧が下がる(当然ですね)、カリウムが若干上昇する(上がりすぎると心停止)、
咳がでる、乳房が張る(男性でも)ありますが、微調整でなんとかなります。

腎炎の程度は、尿蛋白の量(一日尿蛋白と言い、正常値は120r以下)に
比例することが多く、尿蛋白を陰性化(消失)させることが、治療のゴールです。
尿蛋白が続くということは、将来透析になるということです。
通常の治療(ステロイド+抗血小板剤)では、一日尿蛋白300r程度でも中々治りませんが、
高血圧の薬や、免疫抑制剤を組み合わせれば、3000rでも治ることが多々あります。
(場合によって、LDLアフェレーシスという、コレステロール吸着という一種の一時的な
透析療法のようなことを8-12回程度行い、腎炎を治すこともあります。
ただし、これは高額な治療なので、今までは自己負担の金額が大きすぎて、
中々できませんでしたが、限度額認定という制度を利用できるようになり、可能となりました。)

腎炎は、治りづらい病気ですが、最近は、かなりの確率で、治癒できるようになっており、
早期の治療を受けてください。

当院の代表的な処方です。
アルダクトン(50)1錠 朝
バイアスピリン(100)1錠 朝
ブロプレス(2)2錠  朝夕各1錠
コバシル(2)2錠   朝夕各1錠

膠原病などが原因の場合
ブレディニン(50)2錠 夕
を追加したりします。