■HDFの目標と行動

HDFの治療効果についての報告はたくさんあるので、医療関係者も患者団体もある程度は、    ご存知だと思います。

治療効果
1.眼圧が下がる(緑内障の予防)。
2.関節の痛みが起きにくい(β2ミクログロブリン低下:当院で20以下まで低下している患者が多い)。
3.色素沈着が起きにくい(ACTHの除去:メラニン刺激の低下)。
4.貧血の改善(透析液の浄化が、体内の炎症を起き難くし、鉄代謝が正常化。
  ただし内因性エイスロポエチンは低く、目標の血色素量にもよるが、十分な薬の量は必要)
5.かゆみの軽減。
6.不眠の軽減(ムズムズ症候群)。
7.透析中の血圧低下の予防。
 などなどが列挙されています。
当院では、その他に、
8.口渇の軽減。
9.脳血管障害(出血、梗塞)心不全の予防効果(私見)
などが見られます。

このような効果が見られる理由は、透析効率の改善によります。
東京女子医大の峰嶋先生の「性能評価の基礎」の中の計算式を使うとほぼ以下のことが言えます。
1.通常透析は24Ccr(いわゆる生体の正常腎機能を100ml/minとした場合)が8ml/minに相当。
2.CAPD(腹膜透析)は6ml/minに相当。
3.オンラインHDFは15〜25ml/min以上に相当。(透析時間にもより変化しますが)
つまり、通常透析は維持透析、字のごとく、透析開始時の体調を維持するのが目的です。
一方オンラインHDFなどは、血清クレアチニンが2〜3mg/mlで、先生に「将来透析が必要かもしれないが、食事療法をがんばりましょう」と言われたころの、自覚症状が無く元気だったころの体調に戻す治療であることがいえます。
透析効率が良いため、当院では、カリウム制限や飲水制限は基本的に行っておりません。
また、レグパラの併用により、リン(P)に関しても、制限しなくても良くなりつつあります。
(リンの管理、副甲状腺の管理が十分できるようになり、動脈石灰化(硬化)や、骨粗鬆症(骨折)の治療に革命的変化がおきました)。

治療目的
1.合併症を抑えながら、生存率を上昇さる。(10年生存率が2倍になると言われています)。
2.患者の体調が良いため、ほぼ全員が、独歩可能で、少なくとも身の回りのことができます。
3.そのため、家族が安心して、仕事ができます。介護、通院に悩まされたり、犠牲になることが
  少なくて済み、結果として、社会に貢献しています。


ここでは、これ以上詳細なことは書けませんが、透析患者と言っても、治療により、ほぼ正常な状態まで、戻すことができるということを伝えたかったわけです。

行動
ただ、全て保険の範囲の中で可能な治療ではありません。
現時点では、医療機関の負担で行っており、オンラインHDFの普及にならない最大の問題です。
この問題の背景には、
1.透析患者は、維持透析の状態では、十分に労働に耐えることができず、、その結果、
  働かない患者ばかりになり、世間も、患者もその状態があたりまえに思っている。
2.社会復帰(労働復帰)を前提にした透析医療であるが、その前提が崩れたため、
  ただの医療資源消費者の治療コストは削減されている
  (この10年で25%診療報酬は低下している)。
3.オンラインHDFなどを受けている患者が、腎友会などを通して、患者全体のための国会行動や、  厚生労働省へのアピールをしていない。特にこれが重要で、治療効果の証明でもある人たちが、
  行動を起こすべきです。
患者が、自助努力しない場合、当然医療のレベルは低下し、その成果は必ず自分たちに跳ね返ることを自覚すべきと思います。
また、透析患者のみ、ほぼ医療費無料化の状態ですが(あまり世間は知りませんが)、
一人当たり年間500万円かかり、また税制面などの優遇があることを考えれば、ある程度の自己負担をしなければ、他の病気の方との公平性に問題が残ります。
皆で、限りある医療資源を有効に使うため、エゴを捨て、協力する姿勢が大切ではないでしょうか。